子宮内膜症
症状・疫学
子宮内膜症は子宮内腔にあるべき子宮内膜が子宮以外の場所で発育したものを指し、月経がある限り進行する病気です。
しかし女性の10人に1人がかかるといわれ増加傾向にあります。
原因ははっきりと解明されていませんが、月経血が卵管を通ってお腹の中に逆流し生着してしまう子宮内膜移植説や、お腹の内側の膜(=腹膜)が何らかの理由で子宮内膜に変化し子宮内膜症になる体腔上皮化生説などが言われています。
病変は次のように分けられます。
1.腹膜病変
腹膜や臓器の表面に発生し病変はミリメートル規模でバラバラと散らばっており癒着の原因になるものです。
画像検査では診断できず、実際にお腹の中をみることで診断できます。
子宮・卵巣・腸管が癒着し骨盤内が一塊となってしまうこともあり、凍結骨盤(frozen pelvis)と呼ばれます。
2.卵巣子宮内膜症 (卵巣チョコレート嚢胞)
卵巣内に発生しチョコレート様の古い血液が溜まります。良性卵巣腫瘍ですが0.7%程度に卵巣がんが発生するとされています。
腫瘍が10㎝以上、小さくても年齢40歳以上、腫瘍内に充実部(こぶ)があるような場合には注意が必要となっています。
3.深部子宮内膜症 (ダグラス窩・深在性子宮内膜症)
お腹の中で一番底辺になるくぼみをダグラス窩といい、ここの腹膜より潜り込んだ場所にできるものです。
4.他臓器子宮内膜症
肺、膀胱、尿管、腸管といった体のどの部分でも発生します。症状は部位によって様々ですが、月経時に症状が現れます。
厳密には子宮内膜症とは区別されますが、子宮筋層内に病変ができ子宮が全体的に大きくなってしまう子宮腺筋症というものもあります。
その診断にて内診、超音波検査、MRI画像検査、腫瘍マーカーなどが用いられますが、手術しないと診断できない場合もあります。 自覚症状として徐々に悪化する月経痛、下腹部痛、腰痛、慢性骨盤痛、排便痛、性交痛、不妊などが挙げられます。原因不明の不妊症の50%に子宮内膜症があると言われています。子宮腺筋症があると月経量が多くなることがあります。 |
治療法
治療は薬物療法と手術療法に分けられます。
手術療法薬での効果が得られない場合、不妊の場合、年齢、腫瘍の大きさによって選択されます。
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手術の種類
卵巣腫瘍摘出術
チョコレート嚢腫に対し腫瘍のみを摘出し正常部分を温存する手術です。
妊娠を希望する方や閉経前の方に対して行います。
しかし卵の数が減ったり卵巣機能が低下することがあると指摘されています。
そのようなことを避けるために手術操作を工夫しています。
付属器切除術
付属器(卵巣・卵管)ごと摘出するが行われます。閉経後の方や感染を伴うような場合に行います。
子宮内膜症病巣除去術
病変をレーザーなどで焼いたり、切り取っていきます。
癒着剥離術
癒着を剥がし、元の状態に戻します。
子宮腺筋症病巣除去術
子宮腺筋症の部分のみを摘出する手術です。
状態によっては可能な場合があります。外来にてご相談ください。
ただし悪性腫瘍の疑いがある場合には、積極的には腹腔鏡下手術は行っていません。
腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術のイメージ
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腹腔鏡下子宮内膜症病巣除去術では、以下のような傷になります。
多孔式パラレル法当院では可能な限り体へのダメージを減らすために3箇所の穴(3孔式)で行っています。(通常他院では4孔式です) |